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【南仏プロヴァンスの風景】城塞に守られたキュキュロン村散策

プロヴァンスの代表的な美しい村々が点在するリュベロン地方。

その中でリュベロン山脈の南側は北側に比べるとまだ観光地化が進んでいないといえるでしょう。

そんな村の中から今回はキュキュロン村(Cucuron)を紹介します。

キュキュロン村の位置とアクセス方法

キュキュロン村アヴィニョン(Avignon)から南東に75Km、エクサン・プロヴァンスから北に35Km、リュベロン地方に東西に延びるリュベロン山脈の南側に位置します。

ルールマラン(Lourmarin)からはわずか8Km程度の隣村となります。

村へのアクセスですが、車が利用できない場合、リュベロン地方の入り口に位置するカヴァイヨンという町からバスが出ています。8番のバスです。

https://storage.googleapis.com/is-wp-22-prod/uploads-prod/2021/07/ZOU84_Ligne8_CAVAILLON_CADENET_PERTUIS_CUCURON.pdf

キュキュロン村の歴史

知名度では隣村のルールマランにかなり劣りますが、その歴史は古く、1970年頃の調査で、すでに紀元前1世紀にはガリア・ローマ時代の集落があったことがわかっています。

面白いのは村の名前の由来。なんとローマ皇帝ユリウス・カエサルの言葉、逃げ惑う住民に対して Cucurrunt?(なぜ走るのか?)と言ったのが由来とか?!

11世紀ごろには村の中心部は、レイヨンヌ=ヴァランス家によってサン・ミシェル城塞の周りに建設されました。

この地域の交易路と塩の道に面した有利な立地のおかげで、町は急速に発展し、13世紀には第二の城壁をさらに拡張しなければいけないほどでした。

その後、ユグノー戦争ではプロテスタントの村々に囲まれたカトリックの村として生き延びましたが、1720年のペスト大流行の際には、人口の3分の1を失う被害を受けました。

19世紀に入ってからは、経済の衰退に伴う農村からの人口流出によって人口減少が止まりませんでした。第一次世界大戦により、さらに過疎化が進んだようですが、ワイン用ブドウの栽培や野菜、果物、オリーブの栽培に力を入れるなどして、村の衰退を食い止め、第二次世界大戦以降はインフラ整備などによる村の近代化で新たな居住者を呼び込むことに成功、また最近はさらにファミリー向けの新たな政策が功を奏して、人口が増加する傾向にあるようです。

キュキュロン村の散策

この村もゆっくり歩いても1時間もかからない小さい村です。町外れの駐車場に車を止めて歩き始めることにしました。

村は東西に細長く両サイドの丘とそれを繋ぐ平地でできており、現在もかつての城壁の一部が見られます。

駐車場からサン・ミシェル城塔(Donjon Saint-Michel)へ(A~B)

まずは村の外周に沿って歩くと黒い石が積み上げられたかつての城塞の門と思われる建造物が現れます。ここからはUターンするように村の上部へ進む道に入ります。

そのさき、細い路地を進むとすぐに視界が開け、小高い丘の上のサン・ミシェル城塔(Donjon Saint-Michel)が姿を現します。

初期の村はこの丘を中心に市壁を築いていいたようです。

サン・ミシェル城塔からノートルダム・ド・ボーリュー教会(Notre-Dame-de-Beaulieu)へ(BからF)

さて、この丘から村を見渡すとすぐに目に入るのが、時計台(鐘楼)です。

時計台(鐘楼)は13世紀の市壁の門の上に1540年に建てられ、小さなランタンと聖なる十字架を戴いています。

この時計台は14世紀に領主の財政難を利用し、その権利の一部を買い取った村の初期の独立の象徴だそうです。

かつての市壁の内側(左)と外側(右)を見比べると、村のメインストリート側に時計が付いています。

さて、時計台を過ぎると村の公証人役場があります。またこれが随分と立派な建物でした。

次の目的地、ノートルダム・ド・ボーリュー教会のすぐ手前には、博物館もあり、村の歴史を目で追うことも可能です(入場無料)。

ここまで村の中心部を歩いてきましたが、カラフルな壁や南仏風の鎧戸はきれいで目を楽しませてくれるものの、観光客を対象にしたようなレストランやカフェ、お土産屋などはあまりなく、落ち着いた生活感のある静かな村です。

ノートルダム・ド・ボーリュー教会(Notre-Dame-de-Beaulieu)から村の池(Bassin de l'étang)へ(FからJ)

リュベロン地方の村々を回っていると、毎度のことなのですが、どの村も教会が現在の村の規模に対して立派!

このノートルダム・ド・ボーリュー教会は13世紀に、それまであったサン・ミシェル教会に代わり建てられ、その後16世紀に鐘楼部分が加わるなど改築を経て現在に至ります。

1961年以降は歴史的建造物として保護されています。

内部は、財政的な問題か、修復が進んでおらず痛みの激しい箇所も見受けられますが、その分、過去の状態を見ることができ、想像以上に見ごたえがありました。

入ってすぐ右手にある礼拝所には、あまりこちらで目にしたことのない、木の彫刻による祭壇が、痛んではいるものの現在もその姿をとどめております(虫食いのような穴がかなりある)。

また壁は傷んではいるもののフレスコ画が残り、さらに、写真にはありませんがサント・チュール(Sainte-Tulle)を含む3人の聖遺物をおさめた祭壇までありました。

他の礼拝所も一つ一つが興味深く、この村での多くの時間をこの教会内で費やしました。

さらにこの教会のパイプオルガンも素晴らしく、ちょうど音出しをしているときに出くわし、じっくり聞く時間が持てました。

17世紀のもののようですが、1975年から1982年にかけて行われた最後の修復作業で、オルガンのすべての部品が洗浄され、ひとつひとつ修理され、1994年から再び使用されているとの事。

さて、すっかり教会で時間を費やしてしまいましたが、ここからは、最初にいたサン・ミシェル城塔のある丘と対を成すもう一つの丘の上にある市壁の見張り塔(Tour du rempart)を目指します。

塔の中には入れませんが、塔の周りは視界が開けており、これまで歩いてきた村全体を見渡すことができます。

さらにここからは市壁の外側を歩き、最後のゴール地点、村の池(Bassin de l'étangを目指します。

途中、市壁の北側にかつての氷貯蔵庫(市壁よりさらに掘り下げた石造りの貯蔵庫)や市門などを見ながら進みます。

さて、こちらの池ですが、現在はプラタナスに囲まれたとても穏やかなエリアです。もともとは製粉所用の水の供給場所として存在していたようです。

私たちが訪れた日は、たまたま”陶器・焼き物市”の日で、村のどこよりも賑わっていました。

また、毎週火曜日の午前中にはマルシェが立つようです。

まとめ

こんな小さい村ですが、映画やテレビドラマの舞台としても登場している美しい村なんです。ラッセル・クロウ主演の『プロヴァンスの贈り物』(原作:a good year:ピーター・メイル著)なんか有名です。

また、村には、ツーリストインフォもありますが、私たちは、村のそこかしこにある名所説明看板を見ながら回りました。

とても小さい村で、あまり観光化されておらず、ゆっくりとした時間が過ごせます。特に教会は見ごたえ十分なので、おすすめです。

次回は、マルシェが立つ日に立ち寄ってみたいですね。

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