フランス・アルザス地方を南北に抜けるアルザス・ワイン街道(La Route des Vins d'Alsace)。
今回紹介する町はその中でも最も北にあるヴィサンブール(Wissembourg)です。
ドイツ語表記では、Weißenburg(ヴァイセンブルク)となります。過去に幾度となくあった国境ラインの変化でフランス領だったりドイツ領だったりしたアルザスですが、もともとドイツ系アレマン人が広く定住している地域で、ドイツ語系のアルザス語が話されていたこともあり、今もドイツっぽさを感じる名前の町が多くあります。
ドイツから国境を越えてヴィサンブールへ
フランスはいる手前の国境沿いのドイツの町、シュヴァイゲン(Schweigen)には、ドイツワインのワイナリーが数多くあり、ここまではプファルツワインに区分されます。
そしてのこの町の見どころは威風堂々とした構えのドイツ・ワイン門(Deutsches Weintor)です。1936年建造と決して長い歴史を持つ建物ではありませんがラインランド・プファルツ地方を南北に走るプファルツワインのドイツワイン街道の最南端のシンボルです。門の下を行く道の名前は”ワイン通り”でした(車の通り抜けはできません)。
さて、ドイツの最後の町を通抜けると、ほんの数分でフランスに入った模様(看板の文字などからフランスと認識)。ドイツから向かった我々も正直どこが国境だったのかわからないぐらいでした。
そして最初にたどり着く町が、今日ご紹介するヴィサンブールです。
前置きが長くなりましたが、ヴィサンブールの歴史は古く、その起源は660年ごろのベネディクト派の修道院だそうです。
1648年にはウェストファリア条約に基づき、他のアルザス地方の町々と同様にフランスに併合されました。その後も幾度となくフランスとドイツの間では国境が変わりましたが1919年のヴェルサイユ条約で改めてフランス領となりました。さらに第二次世界大戦でも一時的にナチスドイツに占領されますが、終戦とともに再びフランスに戻っています。
現在も1700年前後の市壁の一部が町を取り囲んでおり、はっきりと旧市街と新市街を分けています。
もちろん見どころは市壁内の旧市街にあり、散歩がてら歩いても1-1.5時間ぐらいで十分回ることができます。
旧市街の外れ、市壁が途絶えているところには広い公共駐車場があり、無料で駐車が可能です(だからゆっくり見て回れます)。
町の観光について
まずは駐車場を出て、町を東西に横切るナシオナル通り(Rue Nationale)を町の中心部に向かって歩いていきます。
この通りは商店街となっており昔風の建築とやや今風の建築が少し混じった感じの通りです。
この通りでの見どころはMaison Holzapfel、他の建築とは少し異なった様式で、通りに面している入り口上部にはオーストリア王家とこの町の紋章を持ったヘラクレス?の彫刻があります。
ナシオナル通りをさらに進むとレピュブリック広場に達します。ここには市役所を中心に、町の中心部らしく人出も多く賑わっていました。朝市もこの広場に建つようです。ツーリストインフォはこの市役所内にあります。
ここから道は四方へ分かれるのですが、我々はまっすぐにマルシェ・オー・ポワソン通りを進み、市内を流れるロテ川を渡りましょう!
川沿いにはたくさんの花が飾られ、また緑の公園も色鮮やかでとてもきれいでした。ここは向かいにあるサン・ピエール=サン・ポール教会の眺めも良く抜群の写真ポイントになっていました。
それでは、公園からさらにスー・プレフクチュール通りを進みサン・ピエール=サン・ポール教会に入りましょう。
このゴシック教会は床面積が1320平方メートルもあり、アルザス最大規模のストラスブールの大聖堂に次ぐ大きさです。
13世紀から14世紀にかけて、鐘楼だけが残る11世紀のロマネスク様式の教会の跡地に建てられました。
それでは内部も見ていきましょう。
内部は典型的なゴシック様式で調和がとれています。
ところどころ強い日差しを受けてステンドグラスの様々な色が床や壁に映し出されていました。
南側のトランセプトには、14世紀に描かれた美しいフレスコ画があり、高さ10メートル強の巨大な聖人クリストファーがキリストを運ぶ姿などが描かれています。
いったん教会を出て北側に回り込むと、かつてこの教会が修道院だった時の回廊部分の一部が教会の壁(通路)として残っています。
時間に余裕があれば、是非いったん市壁まで行きのどかな緑と川の流れの中を散歩してみてください。
またこの町には”塩の家”(Maison du Sel)と呼ばれる大きな屋根を持つ家があります。名前のお通り塩の保存場所だったようですが、もともとは病院や肉屋だったこともあったそうです。この時はその大きな屋根の修復中で建物ごと覆われており見ることができませんでした。
まとめ
さて【アルザスワイン街道を行く】シリーズとして取り上げたヴィザンブールですが、ここもまた、フランスでありながらドイツっぽい町でした。夏の終わりの訪問でしたが、緑も花も多くとても気持ちいのいい町でした。
戦争により幾度も国境線が変わったアルザス、現在は隣町のシュヴァイン(ドイツ)とは協力関係にあり、例えば火事の際の消防団や救急患者への対応などは国境に関係なく助け合いの関係が築かれているそうです。