さて、今回は北西イタリアのピエモンテ州のワイナリー・Vinchio Vaglioの紹介です。
世界的に有名なバローロやバルバレスコはアルバ(Alba)を中心としたエリアで醸造されますが、今回紹介するワイナリーはアスティ(Asti)に近いVinchio村(ヴィンキオ)とVaglio Serra村(ヴァーリオ・セッラ)の間の街道沿いにある両村共同で立ち上げたワイン協同組合です。
全く初めての地域で試飲スタートです。
Vinchio Vaglioの紹介
今回、試飲に訪れたワイナリー、Vinchio Vaglio(ヴィンキオ・ヴァーリオ)ですが、かつてはライバル関係にあったモンフェッラート地区のVinchio村とVaglio Serra村のワイン農家が協力して1959年に立ち上げたワイン協同組合です。
現在でも組合の規約では、組合長及び副組合長はそれぞれの村から一人ずつと決まっているようです。
当初19人でスタートした協同組合も現在は200名以上となり、500ヘクタールを超えるブドウ畑での栽培、ワイン醸造、販売、マーケティングなどすべてを一括管理しています。
さらに持続可能なワイナリーを目指し、ワイン造り、歴史的遺産と景観の伝統の保護、社会的持続可能性、経済的持続可能性を念頭に運営されています。
また、『バルベーラの父』と称されるジュリアーノ・ノエ氏も、この協同組合の運営に強く関わっていました(現在も彼の後任がその任を引きついでいる)。
この地区とバルベーラ種
今回訪れたのは、ピエモンテワインで一般的に有名なアルバ周辺ではなく、バルベーラ品種を中心にしたワインを産出するアスティ南部に広がる地域です。
その中でもVichio村周辺は『ヴィンキオのルビー』とまで称されるバルベーラ品種を中心としたBarbera d’Asti DOCGの産地として有名です。
バルベーラ(Barbera)は、おもにイタリア北西部のピエモンテ州で赤ワイン用に利用される黒ぶどうです。
収穫量が非常に多く、果実味も豊富、チェリーやスミレ、またはブラックベリーなどの香りや味わいがあります。
タンニンは少なく、酸味が強いことからも一般的には、長期熟成ではなく、早飲み用のデイリーワインとして日々の生活の中で消費されていくワインに多く利用されます。
そう聞くと、安っぽいワインじゃないかという印象を持つかもしれませんが、そんなことは無く、日々の食事に合わせやすく飲みやすい万能ワインじゃないかというのが私たちの感想です。
特に、この地で多く生産されるBarbara d´AstiやNizzaはイタリアワイン法上、最も規定の厳しいDOCG格付けワインであり、十分に高級ワインと言えるクオリティーにしあがっています。
試飲し購入したワインたち
さて、こちらのワイナリー、何もバルベーラ品種のワインばかりを出しているわけではないのですが、今回は、この地域で最もハイレベルなDOCGワインであるBarbara d´AstiやNizzaに絞って試飲を行いました。
試飲は事前申し込みを行い、コースを選択して有料で行うこともできますが、私たちは行き当たりばったりで飲みたいものを告げて試飲してきました(無料)。
予約をしていない場合、ショップが忙しいと相手をしてもらえない可能性はあります。
Barbera d'Asti D.O.C.G. La Leggenda 2023(6.90ユーロ)
100%バルベーラのみで造られたDOCGワイン(本来、Barbera d´Astiでは少なくとも90%以上バルベーラが使用されていればよい)。フレッシュさが感じられる鮮やかなルビー色。香りは非常にフルーティーでフレッシュ、チェリーや黒ベリー系のアロマが感じられる。味わいは軽めな酸味とフレッシュさのバランスが良く、ピエモンテの料理との相性も抜群。スタンダードワインとして最適。
Barbera d'Asti D.O.C.G. Sorì dei Mori 2023(7.90ユーロ)
とてもバランスの取れた、すでにこの価格帯で高品質であることが感じられるワイン。ルビー色の輝きが夏でも涼しさを感じる。華やかなスミレなどの花の香りを感じ、同時にやや濃厚なフルーティーな香りが来る。フレッシュでフルーティーでありながらも、フルボディな味わいで、バルベーラの特徴でもある酸味とのバランスが取れており、こちらもピエモンテ料理との相性は抜群。
Barbera d'Asti D.O.C.G. Superiore I Tre Vescovi 2021(9.90ユーロ)
スペリオーレ(Speriore)と名乗るためには、樹齢 30 年以上のグリーンハーベストを行ったブドウの木からさらにブドウの房を厳選した後、収穫されたバルベーラ種100%で醸造され、醸造後にはさらに14 か月熟成されます(そのうち少なくとも 6 か月は樽の中で熟成される)。このワインでは醸造後、フレンチオーク樽が使用されています。そのためか、強いルビー色というよりガーネット色と強い香りを持ったバルベーラなのにバルベーラを超えたような味わいに仕上がっています。樽を長期間使用していることでやや複雑なスパイシーな香り、バニラやキャラメルなど強い香りも持ち合わせています。ピエモンテ料理との相性はもちろんですが、よりメインコースの肉料理などと合わせたくなります。
Nizza D.O.C.G. Laudana 2020(14.90ユーロ)
2014年にBarbera d'Astiから独立した新しいDOCGのNizzaでは、18か月以上の熟成期間が必要になります(うち6ヶ月は木樽)。このラウダナは、樹齢50年以上のブドウの木から厳選された房のみが使用され、18か月間、様々なバリックや大樽で熟成されたワインを使用しています(さらに瓶詰め後1年貯蔵)。そのためか、非常に深いルビー色からガーネット色が感じられる濃いワインに仕上がっています。また木の香りやにスパイシーさを感じる香りを持っています。口に含むと完全にフルボディでしっかりした味わいで、それでいて調和が取れてまろやかで、じっくりと味わいたくなる深みのあるワインです。
Barbera d'Asti D.O.C.G. Superiore Vigne Vecchie 2019(19.90ユーロ)
1980年代に多くの地域で古木から新しいブドウの苗に世代交代が行われたなか、当組合では醸造コンサルタントのジュリアーノ・ノエ氏の助言を受け入れ、特定の畑を古木ために確保し「ヴィーニュ・ヴェッキエ」の基礎を築きました。現在は樹齢50-80年の古木から厳選された手摘みの房を収穫し醸造、その後は主にフレンチオークのバリックで熟成されて行きます。明るいオレンジ色の反射のあるルビー色で、強いスパイシーな香りとかすかな木のような香りが漂う上品な仕上げになっています。口に含むとストラクチャーが良く、柔らかく、軽くて甘いタンニンがありながらも、しっかりとした味わいを感じ有られるこのワイナリーを代表するBarbera d'Asti Superioreです。
* 値段はすべて2024年7月末時点の定価(現地では定価から1割引で購入できます)
ワイナリーへのアクセス
近郊の町であるアスティから車で約30分強。
ピエモンテ州の主要都市で州都であるトリノからだと車で約1時間15分程度。
最寄りのヴィンキオ村まではバスが通っているようですが、その先には向っていない様子です。
自家用車、またはレンタカーの利用が必要になります。
まとめ
さて、今回はまだまだメジャーとは言えないBarbera d'Astiの聖地ともいえるVichio村とVaglio Serra村の間にあるワイン協同組合Vinchio Vaglioでの試飲及び購入に関するお話でした。
協同組合ということで、必ずしもバルベーラ品種のみでなく、白ワインやスプマンテなども含め、相当な種類のワインが生産販売されていました。
あまり前知識なしで飛び込んだのですが、結果的に言えば、『バルベーラの父』と言われるジュリアーノ・ノエ氏が関わっていた由緒あるワイナリーでした。
その割には、明らかに値段は安く、高品質なワインが気軽に手に入ります(アルバのほうに行くとビックリするぐらい高くなるので)。
「美味しくてコスパが良いからおススメ」と今回の宿のオーナー一押しのワイナリーでもありました。
この地域は、しっかり腰を据えて飲んでいかねば、と気を引き締めているところです。
すぐそばの村に宿を取っていたこともあり、日々の食事や近場のレストランでの食事も例外なくBarbera d'Asti一択で飲みまくってきました。