今回はアルザスワイン街道の中でも、ひと際その姿が美しく輝いているオー・ケーニッヒスブール城(Château du Haut-Kœnigsbourg)を案内していきます。
20世紀に現在の形に修復されたこの城は、年間50万人もの観光客が押し寄せるフランス全土でも最も観光客が集まるスポットの一つです。
お城の歴史
歴史は古く、最初に登場するのは744年、カール大帝の名前とともに登場し、その後はサンドニ修道院の所有であったようです。
お城自体はホーエンシュタウフェン家(ドイツの王族)により12世紀前半に建てられ、そのため Köningsburg(ドイツ語で王の城)が城の名前となり、現在はフランス語読みでケーニッヒスブールとなっています。
13世紀以降は戦争や争いで所有者が何度も入れ替わっています。
30年戦争では、スウェーデン軍に52日間も包囲され、1633年9月7日に陥落、火を放たれたそうです。
1865年には、セレスタ市の所有となったようです。
また、普仏戦争の結果、それまでフランスに属していたアルザスは、1871年にドイツ帝国に割譲されることとなりました。
1899年にセレスタ市からカイザー・ヴィルヘルム2世(第3代ドイツ皇帝、第9代プロイセン国王)に寄贈された城は、1901年から1908年にかけてベルリンの建築家で城郭研究家のボド・エブハルトによって修復が行われ、その建設費は200万マルク以上になったそうです(そのほとんどはアルザス・ロレーヌが負担しなければならなかった)。
第一次世界大戦後(1919年以降)、城はフランス国有地となっています。現在では、この地方で最も重要な城とされ、アルザス地方にある唯一のフランス国定公園となっています。
お城見学
全長260mにも及ぶこの巨大な城は、ヴォージュ山脈の東端、ライン川上流の低地を見渡せる標高757mの赤砂岩の上に聳え立っており、アルザスで最も標高の高い城の一つです。
ライン川沿いに広がる平地からカイザーシュトゥール(ドイツのバーデンワインの銘醸地)、近隣の城跡(オルテンブール、ラムシュタイン、フランケンブール、キンツハイムなど)まで見渡すことができます。
お城への入り口
我々が訪れた2月にはまだワクチンチェックが行われており、ブースターを含めた3回接種の証明提示が求められる事前チェックがありました。
門をくぐると高い塀の間を進む通路となり、さらにもう一つの門へ向かって進みます。


突き当りを降り返すと坂道となり、やっと城内へ入る門へ到達できます。
この門を潜り抜けると右手の建物内に入場券の販売窓口があります。
下庭
チケットを購入して最初に見るのは下庭となり、ここから実際にお城の中に入っていくことになります。


まずは260mにもなる横長のお城の見取り図から見ていきましょう。下の写真で右側から左側に進みながら見学していくことになります(東から西に進みます)。
お城の内部へ進む
城の内部は、いくつもの建造物が重なる様に建てられており、20世紀になってからの修復兼改装で現在の姿になっています。
建物と建物の間は写真の様につり橋で繋がっていたりして、なかなか面白いです。
内庭と一階の展示
城の中心部であり居住エリアでもあるこの部分が最も解放されており見学のメインとなります。
まずは空が見える内庭です。広くはありませんがここからはいろいろなところへのアクセスが可能であり、やはり居住エリアの中心部といった感じです。


またこの内庭からアクセスできる一室は歴史に関する展示となっており、この城のこれまでの歴史やその時代ごとの姿などを見ることができます。
また20世紀に行われた大修復(大改装)の様子も写真などで見ることもできます。


住居部分の見学
内庭にある螺旋階段を上ると住居部分へアクセスできます。最後の修復・改装者がドイツ皇帝だったからでしょうか、とてもドイツっぽい雰囲気満載でした。


またこのような山城と言えば必ずあるのが、これですね(鹿の角)。


また寒い石造りの城となると暖房施設が大切ということで、この住居エリアには様々なデザインの暖炉がありました。
一部発掘によって見つかったタイルなどを再現して造られた暖炉などもあるようです。
そして、これもこちらのお城に付き物なのが武器庫(20世紀には武器としては役に立たない物ばかりですが、槍や甲冑を並べるのは文化でしょうね)。
大城砦へ向かう
住居部分の見学が終わると再びつり橋を渡り大城砦へ向かいます。
西側は尾根となっているため敵から攻め込まれる可能性を排除し、住居部分を保護する目的でこの城最大の砦が築かれています。
つり橋を渡りきるとこのお城で一番大きい庭に出ます。そして正面の巨大な建物が大城砦となります。
最も西側にあるこの砦部分は南側と北側に大きな円形の塔を持ち、最上部が見学用に開放されていて、このお城で最も見晴らしのいいところになっています。
特に南側からの景色は素晴らしく眼下の景色だけでなく、この横に長いお城自体を眺めることができます。
また塔の内側には広いスペースがあり、大砲などが展示されています。
また北側の塔からもお城全体を眺められますが、北斜面側のため、この日はとても寒々しい写真となりました。
残念なことに、城の中央部にある、この城で最も高い塔(このお城の象徴のような塔)には入ることはできません。
お城への道のり
ストラスブールから高速道路A35を南下してくると、右手の山脈の頂上に立つこのお城はかなり手前から視界に入ってきます。
公共交通機関を利用する場合、例えばストラスブールから電車でセレスタ(Sélestat)へ移動、そこからシャトルバスを利用することになります。
ただし冬季はシャトルバスの運行は無く、2022年は3月5日から12月26日の週末と祝日の運行が基本、さらに夏場は毎日の運行となります。
また、シャトルバスを利用しているとお城の入場料が割引されます。
詳しくは下記のリンクで確認ができます。
Haut-Koenigsbourg Shuttle - Practical information
車でのアクセスでは実際には、ワイン街道の中間地点であるセレスタ(Sélestat)の隣町、キンツハイム(Kintzheim)またはサンティポリーテ(Saint-Hippolyte)がお城に向かう起点となります。
車でお城に向かう場合、キンツハイム(高速道路出口17番)からのルートもいいですが、サンティポリーテ(高速道路出口18番)からだと町からもお城を見上げることができ、そのルート上からお城を視認しながら坂道を登っていくことができます。
そのため、個人的にはこちらのサンティポリーテからのルートがおすすめです。
最後に
とても見ごたえもある楽しい見学となりました。山頂の気温はほぼ0度とかなり寒かったのですが、晴天に恵まれとても素晴らしい景色を見ることができました。
帰りも何度も見上げてしまうような迫力と威風堂々とした構えのお城でした。
見学用の様々な言語の無料パンフレットがあり、日本語も準備されています(ただし日本語はやや怪しい)。
アルザスは決して公共交通機関でのアクセスがいいところではないのが日本からの訪問では難点ですが、事前確認を行ってしっかり計画を立てて動けば、それほど無駄に時間を費やすことなく活動できることと思います。
それでも、可能であれば、レンタカーなど自動車を利用することを強くお勧めします。機動力が一気に上昇すること間違いなしです。
それに好きな時に止まって写真も撮れますしね!