皆さんはフランス片田舎ロンシャン(Ronchamp)村の丘に建つノートルダム・デュ・オー礼拝堂をご存じでしょうか?
今日は世界的に有名な建築家ル・コルビュジェが手掛けたこの一風変わった礼拝堂を紹介したいと思います。
ノートルダム・デュ・オー礼拝堂について
まずは礼拝堂の立つロンシャンの丘ですが、ここには古くから信仰の対象となる聖域があり、教会ができたのは1092年までさかのぼります。その後、紆余曲折あり、現在のコルビュジェによる礼拝堂が完成したのは1955年となります。
Colline Notre-Dame du Haut, Ronchamp - site officiel
この白いコンクリート建築の礼拝堂には、南壁に様々な色彩のガラスがはめられており『光の壁』と言われています。また、入り口の扉はエナメルで装飾されており、特徴的な色彩で彩られています。
礼拝堂以外にも建設労働者のためにコルビュジェ建てた住居なども見学が可能です。
ロンシャンへのルート
正直言ってとても不便なところにあります。町の名前はロンシャン(Ronchamp)。
バス停とローカル線の駅があるので、最寄りの大きい町ベルフォール(Belfort)を拠点にしてバスまたはローカル線で向かうしかないでしょう(35-40分)。タクシーも可能ですが20km強となります。
バスや電車の場合、下車後、この丘をひたすら徒歩で登ることになります(歩いている人も見かけました)。
車の場合も、礼拝堂への看板を見つけたのち、ひたすらすれ違い出来ないほどの細い道を大きく迂回するように回り込んで丘の上の礼拝堂がある山頂に向かいます。
下のロンシャンの町からも、また途中の道路からも全く見えないので不安になりますが、逆に一本道なので大丈夫でしょう。無料の駐車場も丘の上にあります。
礼拝堂へ向かう
さて、車を止めて入り口に向かいます。
丘の上には礼拝堂だけでなく、展示施設や修道院などもあり、敷地内に入るためには、まずは入場料を払います。
入り口には建設時の写真などを含め、この丘の歴史に関しての展示があります。この日は10時の開門を待っている人は我々を含め10名程度でした。
礼拝堂とその他の建築物
エントランスには様々な言語の冊子があり、日本語も用意されています。私たちもこの日本語の冊子も見ながら丘の上の礼拝堂の見学を始めました。
まず最初に目を引くのはなんといっても丘の上に立つ白い特徴的なフォームを持つ礼拝堂です。
礼拝堂の左右には、コルビュジェ作の『司祭の家』(左)と『巡礼者の家』(建築労働者のための家)(右)が見ます。
礼拝堂に近づくと、この礼拝堂の象徴的な南面のガラス窓を外から確認できます。
礼拝堂外周
礼拝堂の周りを一周していきましょう。
南面のガラス窓から東側に向かうと、また異なる印象を持つ建築物に見えます。両サイドに張り出したコンクリートむき出しの屋根が独特です。
上記写真の右壁は野外の礼拝施設になっており、ここでミサを行うこともできるようです。下の写真の中央に見える小さい窓には聖母マリア像が収められており、ミサを室内で行う場合と外で行う場合で像の向きを変えられるようです(こんなの聞いたことない!)。
北面に回り込むと小さい光取りの窓と通常利用されている出入り口があります。屋根より高く伸びている塔はそれぞれ小礼拝室のための明かりとりに利用されていました。
さらに西面はやや低く設定されており上部の屋根の傾きもあり、雨樋が設置されています。これすらも調和したデザインの一つになっています。
この日は特別に?南面のエナメルで装飾されたドアが開いており、そこから礼拝堂に入ることができました。
礼拝堂内部
それでは南面のドアから入っていきます。このドアは回転扉のように開いていました。それぞれの面に装飾が施されています。
南面から差し込む様々な色の光が独特です。窓自体は大きくないので礼拝堂内はとても暗く感じますが、それぞれの形の異なる小窓から差し込む光がとても幻想的でもあります。
祭壇には先ほど外側からも見えたマリア像が置かれている小窓が左上にあります。
また礼拝堂内には先ほど外から見えた3つの塔の下に小礼拝室が設けらていました。暗い室内に置いてここは塔上部から光を取り入れており、そこだけスポットライトがあるかのように光が差し込んでいます。
天井は、中心部が低くなったアーチ形となっています。
鐘楼
これはコルビュジェの作ではありませんが、礼拝堂の外に鐘楼が置かれています。
多き二つの鐘は旧礼拝堂から、小さい鐘は1974年にアヌシーで鋳造されたとのことです。
毎日、午前9時、正午、午後7時に鳴らされるそうです。
その他の建築
敷地内にはさらに、平和のピラミッド、前述の司祭の家、巡礼者の家(礼拝堂建築のための労働者のための家)、聖クララ修道院(礼拝堂のみ見学可)などもあり、広い丘の上をゆっくりと散策できます。
まとめ
9月にスキをついてフランス・アルザス地方に遊びに行った際に、念願かなってやっと訪れることができました。
プロヴァンスやブルゴーニュに向かう際に通過するベルフォールから近いのですが、寄り道する機会のないまま20年以上気になっていました。
ただ思いのほか外壁の劣化が激しく、大々的な修復作業が必要な感じです。
芸術家の作った例としては、ヴァンス(Vence)のアンリ・マテスによるロザリオ礼拝堂、フレジュスの郊外にあるジャン・コクトーが手掛けたコクトー礼拝堂、ランスのレオナール・フジタ(藤田嗣治)によるフジタ礼拝堂などがあり、このノートルダム・デュ・オー礼拝堂もその一つと言えます。どこも非常に行き辛い場所にありますが、それだけに行きがいもあることでしょう。
是非、ゆっくりと時間を掛けて訪問していただくのがおすすめです。